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500文字小説『流浪の遊園地』

『流浪の遊園地』

「27年間ありがとうございました」
「いえいえ、それはこちらのセリフです」
 大晦日を前にやかましい小さな居酒屋。隅で二人の男が飲んでいた。
「次は417光年も離れたところに?」
「も、っていうのは心外ですが」
 痩せている方の男が笑う。
「なあに、私たちはワープ航行技術も持っていますのでね」
 それに私たちの寿命はとても長いですから、とお猪口に口をつける。
「どうでしたか、ここでの27年間は」
「地球での開園時にはいろんな場所からオファーがあったんですよ、実は」
 地域のヒトに愛されたいい遊園地だったと思います、と痩せた男が云うと、背の高い方の男がしみじみと呟いた。
「私も子供の頃はよく遊びに行かせてもらいました」
 そうですか、と痩せた男。
「ぜひ、最後の日はお客さんとして来てください」
 それはもう、ぜひ、と背の高い男は痩せた男に握手を求めた。痩せた男は右手を差し出し、背の高い男はその手を両手で強く包み込む。
「これから地球式の挨拶ができなくなるのはちょっと寂しいかもしれません」
 痩せた男は云った。
「触れ合えることがこんなにも気持ちいいなんて、地球に来るまで知りませんでした」
 次もいい遊園地にします、と。

(氷砂糖498粒)

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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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