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500文字小説『☆を預かる』

『☆を預かる』

 恋人から小瓶を預かる。
「これは?」
「☆」
 大事なものだから、と言い残し、翌日から彼女はどこかへ消えてしまった。
 ☆と言われても、扱い方さえわからない。さてどうしたものかな、と☆の入った小瓶を手に取り眺める。何に使うものだろう。彼女は知っているのかな。彼女はどこへ行ったんだろう。僕の隣に戻ってくるのかな。
 そんなことをぐるぐるぐるぐる。結局、洗面台の彼女の化粧水の横に置いておいた。
「ただいまぁ」
 およそ一ヶ月後に帰ってきた彼女はレジ袋を提げていて、キッチンで何かを始める。
「もうすぐできるから先にお風呂入っておいて」
 言われるままに風呂に浸かり、出てくると見事な魚料理が並んでいる。
「君が?」
「三日月魚の捕獲から頑張ったのよ」
 預けたものは? と問われ小瓶の☆を持ってくる。彼女はシャンパングラスにワインを注ぎ、小瓶から☆を一つずつグラスに入れた。
「お誕生日おめでとう」
 すっかり忘れていた。そうだ、僕の誕生日だ。カンパイと口を付けた☆入りワインはしゅわっとはじける。
「これは提案なんだけど」
 食べ進めながら彼女がいう。
「結婚しませんか」
 ☆の欠片はそのままが口に入るとパチパチと刺激的だった。

(氷砂糖499粒)

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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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