三題噺超短編『快晴のち雷雨の予報』

『快晴のち雷雨の予報』

 広場では古本市がひらかれています。
 大人になりそこねた少年少女は、年をとると本になります。本になって読まれて、捨てる代わりに古本として売られて、また誰かの手に渡り、読まれて、売られて、繰り返して。誰かが読むに堪えた本というのは面白さの証明になり、手あかのついたよれよれの本に高い値段がついているというのもよくあることです。古本市とはそういう本を売買する場所です。
 一人の少年が一冊を手に取りました。ぱらぱらとめくり、苦虫をかみつぶしたような表情。
「この程度で」
 そうつぶやくと、少年は本になってしまいました。
 新品のきれいな本は珍しさもあり目を惹き、幾人かが手に取ります。しかし皆、またもとの場所に置いてしまいます。
 少年は明日、大人になるはずでした。
 少年にはすでに、大人になれる未来がありました。
 本になった人間がまた人間に戻ったという話は聞いたことがありません。
 天気予報は当たりそうで、店主たちは片づけを始めます。売れ残りの本たちは在庫として箱に納められてゆきます。古本屋の本棚に並べられるものもありますが、大半は次の古本市まで箱の中です。

(氷砂糖475粒)
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「もうすぐオトナの超短編」タカスギシンタロ選
兼題部門(三題噺「広場」「大人」「本」)佳作入選作。

日記アメンチアにて評が公開されています。

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こちらでははじめまして

タカスギ評の「ぐさっとくる」がよくわかりました。こういうキッパリした寓話、好きです。

いらっしゃいませー

お読みいただきありがとうございます。
好きと言っていてだけてうれしいですー。
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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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