500文字小説『機械の鶏』

『機械の鶏』

 朝五時になると、カチッと小さな音がしてから甲高い「コッケコッコー!」の叫び声。トサカをなでてやるまで鳴きやまないこの鶏は、祖父が初孫のわたしに作ってくれた機械人形だ。目覚まし時計兼ペットのつもりだったようだ。正直、朝五時はちょっと早すぎると思う。
 餌は石炭。砕いたものを与えるとクックックックと上手についばむ。食べたあとは嬉しそうに「シュゴー!」と蒸気を吐く。わたしが歩くとついてくる。
 この鶏は週に一度、解体してメンテナンスを行う必要がある。幼いころから祖父の手元を見てきたし、わたし自身、幾度も手伝ってきた。手を煤で黒くしながらの作業だ。
 解体すると、稀に透明な塊が取り出されることがある。
「ダイヤの原石だよ」
 祖父はいい、わたしはジャムの瓶にそれらを溜めてきた。もう瓶は三つめだ。調べたところによると、ダイヤなのは間違いないが、宝石としての価値はほぼないらしい。けれど、祖父とわたしで重ねてきた時間の結晶といえる。
 今から、わたしは初めて、鶏を一人で解体する。
 どうか、うまくいきますように。
 どうか。
 昨晩救急車で運ばれた祖父に付き添って、父も母も、まだ帰ってきていない。

(氷砂糖491粒)

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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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