500文字小説『残』

『残』

 旅行に来たのに暴風雨でホテルに閉じ込められる。中にレストランや飲み屋、土産物屋やカラオケまで入ったホテルだったのがまあ不幸中の幸い。支配人より、各施設が格安で使用できるとのアナウンスがなされる。
 ホテルを連れとうろうろしていると、土産物屋の一角に封の切られたウイスキーのボトル数本が並んでいるのを見つける。店員のおばちゃんがやってくる。
「封開いてますからね、その値段でいいですよ」
 飲み屋で封が切られたものの空かなかったボトルなのだという。ある程度のばらつきはあるけれど、どれもだいたい三分の一ほど入っていて二百円。
 数式を立てる。
  ウイスキー×1/3=200円
  ウイスキー=200円×3=600円
 なるほど、格安だ。
 一番入ってそうなボトルとロックアイス、それにミネラルウォーターを購入して部屋に戻る。冷蔵庫の上のグラスをテーブルに置き、連れとサシ飲みである。
 窓の外は唸る雨音。
 ボトルにたった三分の一のウイスキーだったが、眠るまでにはなくならなかった。ロックアイスも溶けた。ミネラルウォーターは最後に全てを飲み干した。
 朝。
 カーテンの隙間から差し込む光が、ボトルの残りを照らす。

(氷砂糖496粒)

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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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