300字SS『安静期』

『安静期』

 月の満ち欠けと生理周期がきっちり一致していて、わたしが満月を見たのはもう遠く幼い頃のことだ。
 カーテンを閉め切った部屋で痛みに耐える。右を上にした方が少し楽かと思ってそうしたり、逆の方が楽かとそうしたり、けれど鈍痛は多少の波はあれど月が明るい間引くことはない。
「また生まれなかった?」
 うさぎからの問いかけだ。いつもは可愛いうさぎだけれど、憎らしさは月の太さに比例する。もっとも、それはわたしの体調による苛立ちなのだろう。うさぎに悪気はない。それはわかっている。うさぎは幼い。仕方がない。けれど黒い感情は募る。自己嫌悪。痛み。
 月光には浄化作用があるという。わたしは長いこと満月を見ていない。

(氷砂糖297粒)
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 企画「#Twitter300字ss」参加作品。
 お題テーマ:月

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モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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