300字SS『その家は無人です』

『その家は無人です』

 ドアチャイムに出ると宅配便のお兄さんが立っていた。荷物を受け取る。荷札には見覚えのある名前がある。梱包をほどいてゆく。
 中には折りたたまれた古い布が。広げると円を中心とした幾何学模様。懐かしくて微笑んでしまう。目を閉じる。思い出す。その昔、懸命に覚えた異国の歌。メロディの尻尾を捕まえ、口から知らない言葉が溢れだす。
「やあ、久しぶりだね」
 思わずその身体を抱きしめたのを優しく抱き返しながら言う、彼は悪魔。降魔の術だ。
「宅配便というのは便利だな。住所を記入しただけで届けてくれる」
 こんな訪問方法を覚えて、と笑うと唇と唇が触れる。無。
「仕方ない恋人だ。こんなところに魂の欠片を残して」

(氷砂糖293粒)
----

 企画「#Twitter300字ss」参加作品。
 お題テーマ:訪れ

コメントの投稿

非公開コメント

注目情報
競走馬ロックキャンディ号の応援サイトではございませんのでご注意ください。
ブログ内検索
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール

こおり

Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

KDP始めたよ!
RSSリンクの表示
リンク
Booklog