300字SS『モグラ』

『モグラ』

 モグラというのは少女に与えられた名前である。親もなく粗末な小屋に住む彼女は、けれど村の者から充分な施しを受けながら生きている。
 村は大地を統べる龍を祭っている。その昔、龍の怒りに触れた村は、大地が裂け、揺れ、土は流れ、生活を失ったのだという。龍を恐れる村人は、毎年貢物を龍の祠に捧げ続ける。龍とは祟りの神である。
 ある夜、モグラは小屋から連れ出される。身を無理矢理清められ、花嫁衣装と化粧を施される。抵抗するモグラを村人は棒で打ち、動けなくなった彼女を龍の祠に捧げ置く。彼女は祠で息を引き取る。恨みが、ひとつ。
 翌日、村はいつもの通り平穏である。モグラという少女がいなくなったことを除いて。

(氷砂糖296粒)
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 企画「#Twitter300字ss」、第二十二回参加作品。
 お題テーマ:地

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モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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