500文字小説『ガラスの花』

『ガラスの花』

 花を育てることがわたしの仕事です。育てた花は街へ売りにゆき、その対価で必要なものを買う暮らしです。
 街を彩る花は赤、青、黄色。普通の花では目を惹きません。わたしはガラスの花を育てています。透明な花びらは物珍しく、一輪も売れずに帰宅することはなくなりました。薄く硬いガラスの花は、けれどその分取り扱いが難しく、他に育てようとする人がありませんので、わたしは街でガラスの花売りとして知られています。
 夜。ふと目を覚まし、ベッドから足を下ろしました。小さな音と共に、その足に痛みが走ります。目を慣らすと、部屋中が花に埋め尽くされているのです。ガラスの花。室内履きを探しましたが見当たりません。わたしは痛みを堪えながら、摺り足で寝室を出ました。キッチンに薬箱があったはずです。廊下も花で埋め尽くされていました。キッチンへ向かうには階段を降りなければなりません。もちろん階段も花で埋め尽くされていました。
 パリンパリンと音を立てて一階に降り、キッチンへ向かいました。薬箱はありましたが、傷薬と包帯は中にありませんでした。使った覚えはありません。誰かが持ち去ったのだと思いました。足はジンジンと痛みます。

(氷砂糖497粒)

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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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