500文字小説『私がダイヤモンドだ』

『私がダイヤモンドだ』

 哀しいときは氷砂糖を口に放り込む。ずんと沈む胸の痛みを深く味わう。甘さにせつなくなりながら、身動きせず、じっとうずくまったままで過ごす。しばらくすると氷砂糖は口の中から消えている。哀しみは硬く小さな結晶となって輝く。私はそれを宝石箱に納める。
 怒りに震えるときは氷を口に放り込む。滾る頭は燃料がなくなるまで放っておく。冷たさに心落ち着けながら、暴れることなく、自分で自分を抱きしめる。しばらくすると氷は口の中から消えている。怒りは硬く小さな結晶となって輝く。私はそれを宝石箱に納める。
 宝石箱にはきらきらがたくさん。大事なものがたくさん。私にしか価値のわからない宝物は、置きっぱなしにしていたところで誰が盗むわけでもない。けれど私は鍵をかける。宝石箱に鍵をかける。
 つらいことの方がおおいけれど、私は強いので、泣かない。

(氷砂糖361粒)

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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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