超短篇競作『Jungle Jam』

『Jungle Jam』

 バカっていわれた。もういい歳だよ、夢だけ追いかけるのもいいかげんにして、と。泣く啓子を慰めることもできず、ただいたたまれなくなって同棲しているアパートを飛び出した夏の夜。
 ライヴ喫茶で働いている。自分のバンドでドラムを叩くこともあるし、出演バンドのサポートに入ることもある。演奏しないときはドリンクや軽食を作る。収入は確かに微々たるものだ。
 行くあてもなく公園のベンチ。ツタッタッツタン。手持無沙汰だとリズムを刻んでしまうのは癖、あるいは職業病。東の空に真っ赤な月が見える。と、タタタタ、タンタン。どこからか別のリズム。目を凝らすと遊具にサルがいる。キキッキェーッキ。声に振り向くとこちらにもサル。群れだ。キキッキ、タタタン。さざ波のように音。命の危険を感じたがグルーヴに囲まれている。じとり。暑さではない汗が滲む。大きなサルが目の前に。手を掴まれ、バンバンとリズムを刻ませられる。
 逃げた。出せる限りの速度で走って、公園からアパートに辿り着いていた。思えばセッション、だったのだろうか。人生を捧げられると思っていた音楽から逃げ出した自分に戸惑っていると、ドアから顔を出していた啓子と、目が、合う。

(氷砂糖500粒)
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 500文字の心臓第141回競作投稿作。
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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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