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第165回競作、選評

 第165回競作『エとセとラ』

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△<エとセとラ1>(胡乱舎猫支店)
>夏が始まると子供達は専用の

不穏さがわりと好みです。
文章がこなれてないというか、固いでしょうか。
慣れの問題ではあるのでしょうが、題材に合う語り口を
選んでいくのも技術の一つかな、と感じます。


○<エとセとラ3>(空虹桜)
> 血尿が止まらない朝。

かわいそう。
そんな主人公もただの駒でしかないのがなおかわいそう。


×<エとセとラ6>(瀬川潮♭)
> マッチ売りの少女がいます。

謎解きの説明がくどいです。
くどいというか、文章を割きすぎ。
あなたが語りたいのはそこですか?
500文字という小さな枠ですので、
あなたが魅せたいものを演出して欲しいです。


○<エとセとラ8>(磯村咲)
>十二支の起源である。

くだらないほら話は大好きです。
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第162回競作、選評

 第162回競作『魚と眠る』

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×<魚と眠る2>(つみき)
> 私の部屋には空っぽの水槽がある

文体に硬さがあって、それがちょっともったいないでしょうか。
説明を説明として書きこむのではなく、
比喩表現で圧縮されていたらすごく好みです。

とはいえ、
>私も父も知らなかったのだ。
の繰り返しはとても印象的で、この表現は絶賛しておきます。
惜しい!の意味の逆選。


◎<魚と眠る14>(脳内亭)
> 魚は鳴かない

とても好きです。
設定説明に多くの分量が割かれていますが
全くくどくなく、すっと読み進められ、納得させられます。
ナナという名前の由来提示のタイミングが絶妙で、
ふっと寂しいような、けれど暖かいような気持ちになります。
そして「妻」はどうしたのだろう、という謎をのこして
物語を印象付けられました。
文句なしに正選、と思ったけどおまけで特選。


△<魚と眠る16>(たなかなつみ)
> 目覚めると視界を覆っていたのは

夢だけど夢じゃなくて、という世界が交錯するファンタジックなお話です。
4段が見事だなーと思いました。
次点。


△<魚と眠る17>(磯村咲)
> 私が産んだのはハタハタだった

乳を飲ませないから乳が張るんじゃないかとは思いましたが、
ないない尽くしでリズムが良かったので。
次点。

第161回競作、選評

 第161回競作『テーマは自由』

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○<テーマは自由3>(なな)
> ある日目覚めた世界は

物語性が高く、タイトルとのフィットでも今回は一番かな。
肥大しからっぽになるというのがビッグバンのようで
音楽のエネルギーも連想されます。
好きです。


×<テーマは自由4>(つとむュー)
>「新製品のテーマは

たった4文字しか超過していないのに長いこと長いこと。
ストーリー自体はくすっと笑えて面白いのですが、
文章がもったりとしていてさらに余分な情報も多いです。
あと個人的なこだわりの話になってしまいますが、
この手のプロダクトはソフトよりもハードの方が技術力が試されそうな。


△<テーマは自由8>(トモコとマリコ)
> 両親から甘やかされて育ち

へえそう来たか!という驚きはすごく新鮮でした。
タイトルに真摯に向かい合った作品だと感じられます。
作品名にきちんと練ったものをつけてあれば正選でした。


○<テーマは自由9>(なぎさひふみ)
>森羅万象、零と一なる無限との合間

超短篇で歌物語をやってもいいんだなあ、という気付き。
タイトな執筆期間で仕上げたことを称えます。
物語自体は若干ウェットに過ぎるかな、という気もしますが
好みかそうじゃないかだったら好きですね。
漢字が並ぶ地の文がかっこいいし。

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<テーマは自由1>
>わたしの転転転転転(……

幻想的でもありいい結末だとは思うのですが、
タイトルから微妙に遠いように感じられました。
好きか嫌いかなら好きですが。


<テーマは自由2>
> つまんない。

わざわざ文頭空白にきちんと句点。
それだけを書くためにちゃんとルールに則っているのは好感が持てます。


<テーマは自由5>
>全てが空振り、

タイトルはこれではないよなあという思いです。


<テーマは自由6>
> >おおい、縛ってくれよ

私にはヒントが少なく感じられました。
読み解けたら面白そうという雰囲気だけわかる。


<テーマは自由7>
>                    

きっちり500文字で仕上げてくるこだわりは推します。
ただ、あまり好みではありません。


<テーマは自由10>
>真っ白なキャンバスがありました。

タイトルに近いところをかすりながら違うところに飛んでいってしまっています。
手馴れていて気付いたら読み終えてしまっているくらい
リーダビリティの高い文章だとは思いますが。

第160回競作、選評

 第160回競作『タルタルソース』

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○<タルタルソース4>(脳内亭)
> 雪が嫌いで嫌いも嫌いで

まず、短いことを評価します。
「解けない」呪い、というところで氷が「融(解)けない」との
意味の重ねあわせによるミスリードが気が利いてて好きです。
UFOが飛来っていうところがすごく意外性があって、
それだけでファニーなのに、さらにエビ型だなんて!
文句なしに正選です。


○<タルタルソース5>(瀬川潮♭)
> 混浴だという。

山猫軒だ!
なるほど色で誘うのもアリなのですね。
最後、「漬かる」なのが初読時は気になったのですが、
下味のために浸すのなら確かに「漬」かなあ、と。
正選。


×<タルタルソース14>(空虹桜)
> この感覚は、

硬質な文章で淡々と語る様子がかっこいいです。
反面、タイトルとの距離が気になります。
ちょっとこねくり回し過ぎのような。
あと個人的には、タルタルソースはゾルっぽいのよりゲルっぽい固いほうが好き。
悩んだけど逆選。


△<タルタルソース16>(海音寺ジョー)
> タルタル島のタルタル人は

なんてないお話ではあるのですが、
ほのぼのしていてしあわせ感があったので次点に推しておきます。

第159回競作、選評

 第159回競作『水色の散歩道』

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×<水色の散歩道4>(雪雪)
>すべては一瞬で終わる。

硬質な文章でファンタジックな様が描かれていて惹かれるのですが、
文章そのものの長さや空白行がどうにも冗長に思えて
もう少しすっきりと仕上げられていたら正選だったなあという感じです。
逆選。


○<水色の散歩道6>(テックスロー)
>手をつないで紅葉散る中を歩いて

超短篇らしい軽やかさと、作品ないで時空間の跳躍があって好みのお話です。
明るい語調なのにどこか哀しくて良いです。
正選。


△<水色の散歩道12>(空虹桜)
> 小学校入学早々、

第三段からの第四段がいいですね。
逆に言えばそれだけかも。
一昔前の高校生みたいな文体。
次点。


○<水色の散歩道13>(海音寺ジョー)
>「散るが愛しい」詩人に

特選と迷いました。素晴らしいです。嫉妬してしまいます。
色鉛筆(ですよね)の擬人化と彼らの生活(?)をベースに
水色の物語の動機がはっきりあって、
けれど変なオチみたいなものはつけずにスナップショットみたいな
終わり方で、興が削がれることもありません。
黒色という物語の観察者がいることも、物語の強度を上げていると思います。
そして彼らが「詩人」の持ち物であるというのがいろいろ想像力を刺激してくれます。

第158回競作、選評

 第158回競作『出てって』

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○<出てって4>(まつじ)
>クローゼットの隅に黒っぽい、

こういうことができるから超短篇が好きなんだよなあ、なんて改めて思いました。
そういうことを思い出させてくれたので正選。


△<出てって6>(青島さかな)
> 七十三歳になった私の中に、

すごく好きなんですけど、
ナルシスティックさを「百合子」に感じてしまって、
何か、この辺りもう少し欲しいような気も。
次点。


○<出てって9>(脳内亭)
> はな唄部・くちギター課では今、

笑いました。
最初、タイトル処理(漢字)で逆選候補かなって思ったんですけど、
ここまで突きぬけてくれたらむしろ正選かしらって。


×<出てって13>(テックスロー)
> テレビの真横でもなく

笑いました。
面白かったです。
座の文芸である超短篇で季節を全く無視した気持ちよさに逆選を。

第157回競作、選評

 第157回競作『百年と八日目の蝉』

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○<百年と八日目の蝉7>(まつじ)
> おれたちは

どこが優れているのかうまく言語化できないのですが、一目惚れです。
べらんめえ調っぽい語り口で、語り手に生き物の強さみたいなものを感じました。
強さと儚さ、アンビバレントなものが同居しているように読め、面白いです。
正選。


△<百年と八日目の蝉9>(海音寺ジョー)
> りゆ婆が食べなくなった

前半すごくいいのに、後半はタイトルの説明のみに終始していて残念です。
次点。


○<百年と八日目の蝉10>(なぎさひふみ)
>永遠と玉響の

今回、ダイレクトに蝉について書かれたものは評価を下げ気味にしたのですが
この作品は「蝉」という単語を出してはいないものの蝉について描かれています。
難読漢字を使った単語が印象的で、印象派の絵画のような効果を出していて面白かったです。
印象派の絵画と書いてしまいましたが、受けるイメージは影絵のようです。
正選。


△<百年と八日目の蝉12>(空虹桜)
>漠々たる世界で

一行作品として飛びぬけて優れているとは思えませんが、
長く語りたくなりそうなタイトル(実際、今回は長いものが多かったですね)を
この短さで切りつけようとした心意気に。
次点。


×<百年と八日目の蝉14>(森野照葉)
> 百八蝉については諸説ある

括弧が二種類使われている意図が読めませんでした。
坂元輝氏、この作品で初めて知ったのですが、私の好みより上品ですね。
(まあ私はジャズというよりピアノインストを好んでいますが)
(よくわからないミーハーアピールすみません)
検索しても該当曲は見当たらないようなのですが、
実在の人物に括弧内、特に「」内を語らせるのは、どうにも説得力が欠けているように思えます。
どちらかというと、「アイデアの失敗」というよりは「演出の失敗」という感じです。
逆選。

第156回競作、選評

 第156回競作『永遠凝視者』

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×<永遠凝視者4>(脳内亭)
> 一周するのに4分33秒かかる

4分33秒はネタにされ過ぎてて若干食傷気味。
もう一ネタでも絡めて欲しかったところです。
逆選。


○<永遠凝視者5>(たなかなつみ)
> 春になると土から眼玉が

奇妙な「眼玉」の生態(?)が面白いです。
湖に流して土から湧いてくるって、何らかの液体なんだろうか。
過去も(そしてこの先も)繰り返される「眼玉」の出現と、戦。
対比が巧いと思いました。
正選。


○<永遠凝視者13>(まつじ)
> あなたが何を見ているのだかは知らないけれど

文章全体を包むせつなさが好きです。
瞬間を強調することで「永遠」を機能させているところもよいと思います。
正選。


△<永遠凝視者15>(雪雪)
>「なんだ死んでも魂あるじゃないか」

正選に推したいのに長すぎる……。
時系列がくるくる変化するのは面白いと思うし、
ライヴとビデオ(ライブとビデオ、か
ライヴとヴィデオで統一して欲しくはあるものの)
の対比も巧く機能しているのに。
この長さじゃないと書けなかったのでしょうか。
逆選と悩んで次点。

第155回競作、選評

 第155回競作『投網観光開発』

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×<投網観光開発2>(はやみかつとし)
> リソースが潤沢となった現在においては

短い作品ですが、悪い意味で情報量が多すぎます。
と感じたのは漢字の多用が原因か改行されてないことが原因か。
逆選を。


△<投網観光開発5>(胡乱舍猫支店)
>丸太を使ってログハウスを模した看板には

素直に笑ってしまったので次点。


◎<投網観光開発8>(雪雪)
>朝礼を永遠に振興する一族郎党。

よくこのタイトルでこれが書けたなあというある種の畏怖。
体言止めの多用で、若干演出過剰かも、とは思いますが
概念や定義をこねくり回すのはとても好みの題材ですし
最後の一文、突拍子もなくファンタジックで、この飛躍は「超短篇的」なのでは。
特選を。

第153回競作、選評

 第153回競作『P』

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△<P4>(葉原あきよ)
> 休み時間のたびに、

軽やかでいいと思いました。


◎<P5>(脳内亭)
> 広大な綿花畑の中を汽車が走る。

元ネタがあるのかどうか知らない(調べないものぐさ)のですが、
一つの音楽に関するエピソードとして上質だと思いました。

どうしてもマッチしにくいアルファベット1文字のタイトルを
本筋から切り離してミュージシャンのミドルネームを持ってきたところも
思い切っていてよいと思います。

今回はタイトルのせいか「無理矢理だなあ」と感じる作品が多かったのですが
一つの文芸作品として読ませることはとても大事に思います。
文句なしの特選。


×<P19>(はやみかつとし)
>チョット、

なんか逆選票欲しそうだったので。
他に逆選に推したい作品も思いつかなかったので。
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Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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