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500文字小説『神の箱庭』

『神の箱庭』

 私は神である。
 言葉を紡ぐと物事は輪郭を持ち、姿を得、それぞれに動き始める。
 言葉を扱う私は、すなわち神である。
 箱庭には多種多様な存在を配置した。喜び、怒り、哀しみ、楽しむその存在を私は慈しむ。全てが私の作品であり、全てが存在自身の自我を持つ。
 私は神である。
 気の向くままに箱庭を破壊する事もまた、造作もないことである。
 しかし。
 しかし作った箱庭と箱庭にいる存在たちには情が湧いている。情、だろう。
 私の作りし存在よ、せめてその儚い生を謳歌せよ。
 私は祈ろう。幸せであれと。

(氷砂糖241粒)

500文字小説『白い花』

『白い花』

 白い花が薬になるのだという。
 だからわたしは探した。一番清潔な白い花を。一番美しい白い花を。
 見つけた花は花言葉が悪く、見つけた花は匂いが強く、見つけた花は毒があった。
 探した。
 探して探して探した。
 やっとのことで白い花を手に入れたと思ったら目は覚め、それは夢だった。
 けれど薬が必要であることは夢ではなく、わたしは白い花を探す。
 見つからない見つからない。
 あの子にあげるための、白い花。
 もはやもう手遅れだけれど、私はあの子に白い花をあげたい。
 白い花はきっとどこかで咲き誇っている。

(氷砂糖246粒)

第165回競作、選評

 第165回競作『エとセとラ』

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△<エとセとラ1>(胡乱舎猫支店)
>夏が始まると子供達は専用の

不穏さがわりと好みです。
文章がこなれてないというか、固いでしょうか。
慣れの問題ではあるのでしょうが、題材に合う語り口を
選んでいくのも技術の一つかな、と感じます。


○<エとセとラ3>(空虹桜)
> 血尿が止まらない朝。

かわいそう。
そんな主人公もただの駒でしかないのがなおかわいそう。


×<エとセとラ6>(瀬川潮♭)
> マッチ売りの少女がいます。

謎解きの説明がくどいです。
くどいというか、文章を割きすぎ。
あなたが語りたいのはそこですか?
500文字という小さな枠ですので、
あなたが魅せたいものを演出して欲しいです。


○<エとセとラ8>(磯村咲)
>十二支の起源である。

くだらないほら話は大好きです。

500文字小説『エとセとラ』

『エとセとラ』

 サウナの一番いい位置に腰掛ける男の背中には彫り物があった。羽衣のみを纏った裸の天女。
「俺はなァ、もう女は抱けねェんだ」
 男は語る。
「あいつだけを愛していたのに、あいつは俺を遺してよォ」
 俺にとってはただ一人の天女様だったんだよォ、と手を膝で握った。
 私は彼に問いかけた。
「叶うなら、何を願いますか?」
 そうだなァと男はつぶやく。
「生まれ変わりってのがあるんなら、もう一度あいつと生きてェな」
 まっさらな俺のうちに出会いたかったんだ。そう虚空に吐き出す彼の命が今夜散るであろうことはここにいる全員が承知していた。
「しみったれててもしょうがねェ、サウナ出たらド派手にいくぞ」

(氷砂糖286粒)

500文字小説『嘘つきの少女』

『嘘つきの少女』

 あるところに嘘しか言わない少女が住んでいました。
 少女は誰からも疎まれ、いつも一人で過ごしていました。
 そんなある日、少女のもとに青年が現れます。
 青年は少女の嘘を裏返して受け取ります。
 少女は一人ではなくなりました。
 青年は少女をたいへん大事に扱ってくれました。
 少女は青年に何度も嫌いと言いました。
 青年はにこにこして好きだよとささやきます。
 長く二人で過ごし、少女はついに勇気を振り絞りました。
 青年に大好きと伝えたのです。
 生まれて初めて言う本当のことでした。
 青年はごめんねと言って少女の前から姿を消しました。

(氷砂糖261粒)
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プロフィール

こおり

Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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