300字SS『そして、闇』

『そして、闇』

 エレクトリカルフェアリーのスパークちゃんは疲れ果ててしまいました。だってみんなあまりにも簡単にスパークちゃんを召喚してしまうから。スパークちゃんは西へ東へ、北へ南へ。いついかなる時でも呼ばれてしまうと応じてしまう律儀な性格です。
 けれどスパークちゃんは頑張りました。頑張っても頑張っても、それがスパークちゃんの仕事だと気付いてもらえることはほとんどありません。
 父なるサンダーは、現状を知って大いに哀しみました。そして怒りを露わにしたのです。たちまち空を暗雲が覆い、雷鳴が轟きました。
「パパ……」
 力ない笑顔でサンダーに抱きついたスパークちゃんは、ようやくぐっすりと眠りにつくことができたのでした。

(氷砂糖300粒)

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ホラー超短編『白い!』

『白い!』

 一時間後の締め切りに間に合う気がせず、カンヅメ用の部屋を融通してもらう。
 ドアを開けるとあまりの白さに戸惑う。窓はない。壁も白けりゃ床も白、机と椅子まで真っ白だ。けれどそんなことに構っている暇はない。机にノートパソコンを置き、椅子に座り、ワープロソフトを立ち上げる。あと五〇分。
 カタカタと打ち込み続け、タバコが吸いたいと思って顔を上げると壁の白。当然禁煙の部屋だろう。モニターに視線を戻すと書いた文章が全て消えている。どうしたことだ。あと二〇分。
 焦りながらカタカタとキーを叩き続ける。ペットボトルのお茶を一口飲んでモニターに視線を戻すと文章が消えている。どういうことだ。あと一〇分。
 カタカタ、カタカタ、打鍵を続ける。もうすぐ書きあがる、と今までのところをスクロールすると画面外に文章がない。どうなっているんだ。あと三分。
 文字を打ち込み続け、文章が消えていないか確認して、ところが消えていて、カタカタと指を動かす。書いたところから文章は消え、書き、消え、書き、消え、まるでいたちごっこ。
 背後でギィッとドアのきしむ音がして、振り返ると担当者ではない白ずくめの男がいる。
「時間です」
 男が近寄っ

(氷砂糖500粒)

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500文字小説『彼女は雨』

『彼女は雨』

 乾いた僕を潤してくれたのはいつも彼女だった。
 天気予報は晴れが続くと示し、僕は全裸で立ち尽くす。

(氷砂糖49粒)

500文字小説『一途な恋』

『一途な恋』

 強い日差しに焼かれながら立っている。
 周囲には何もなく、周囲には誰もなく。表面が乾いた地面から土ぼこりが舞う。
 ただ光を浴びている。誰にでも平等に降り注ぐそれを、まるで自身のみが独占しているかのように。
 遠くで蝉の声が聞こえる。けれど、陽炎に揺らめく空気は音までも変質させてしまう。
 美しい花だ。
 強い花だ。
 黄色い花びらをめいっぱい広げて立っている。
 大きな葉は、実は少し萎れ始めている。
 周囲の雑草はもうこの日照りで枯れ果ててしまった。孤立。
 強いからこそ、耐えられたからこそ、立って太陽の方を向き続ける。
 真夏日を超え、猛暑日になり、灼熱の中を立っている。
 見返りはない。
 日は毎朝昇り、この地を焼きつくし、夕方には沈む。
 一輪のひまわりが強い日差しに焼かれながら立っている。

(氷砂糖342粒)

第156回競作、選評

 第156回競作『永遠凝視者』

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×<永遠凝視者4>(脳内亭)
> 一周するのに4分33秒かかる

4分33秒はネタにされ過ぎてて若干食傷気味。
もう一ネタでも絡めて欲しかったところです。
逆選。


○<永遠凝視者5>(たなかなつみ)
> 春になると土から眼玉が

奇妙な「眼玉」の生態(?)が面白いです。
湖に流して土から湧いてくるって、何らかの液体なんだろうか。
過去も(そしてこの先も)繰り返される「眼玉」の出現と、戦。
対比が巧いと思いました。
正選。


○<永遠凝視者13>(まつじ)
> あなたが何を見ているのだかは知らないけれど

文章全体を包むせつなさが好きです。
瞬間を強調することで「永遠」を機能させているところもよいと思います。
正選。


△<永遠凝視者15>(雪雪)
>「なんだ死んでも魂あるじゃないか」

正選に推したいのに長すぎる……。
時系列がくるくる変化するのは面白いと思うし、
ライヴとビデオ(ライブとビデオ、か
ライヴとヴィデオで統一して欲しくはあるものの)
の対比も巧く機能しているのに。
この長さじゃないと書けなかったのでしょうか。
逆選と悩んで次点。
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プロフィール

こおり

Author:こおり
モノカキ時は「氷砂糖」の筆名使用。
息をしたり、寝たり、食べたり、音楽を聴いたり、500文字小説を書いたりしています。
鉄の街出身、晩秋生まれの嘘詠い。

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